尺野将太新ヘッドコーチ 就任記者会見コメント
■登壇者
浦 伸嘉(代表取締役社長兼GM)
尺野 将太(新ヘッドコーチ)
■株式会社広島ドラゴンフライズ 代表取締役社長兼GM 浦伸嘉より ごあいさつ
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
新体制として尺野将太新ヘッドコーチを迎えました。コロナ禍で閉塞感漂う中、なんとかバスケットボール、スポーツの力を最大限発揮して、ファンの方、広島県の方々、そして全国の方々にスポーツを通じて活気を、感動をお届けしたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
■尺野将太新ヘッドコーチより ごあいさつ
おはようございます。
この度、広島ドラゴンフライズの新ヘッドコーチに就任した尺野将太です。
シーズン途中の就任でなかなか厳しい状態の続いているチームにどれだけいい影響を与えられるか、手探りなところではあるのですが…。練習に何度か行きましたが、残りのシーズンをあきらめている選手は一人もいないですし、「来季に向けて」ということではなくて、「残り(シーズン)を本当に勝利に向けて、チームのためにがんばれるか」という雰囲気が残っていました。
厳しい状況に変わりはないですが、チームの良さをどれだけ引き出せるか、広島らしさを取り戻せるかというところにチームとして挑戦していきたいと思います。
■浦社長兼GMより就任の経緯説明
時系列で申し上げますと、(2月10日の)琉球戦の後に、私と(稲吉正樹)オーナーとで、話しました。それまでも何度も話しているんですが、ここで「方向転換していかないと厳しい」と判断しました。その日のうちに尺野さんに連絡しました。「急な話だし、いろんなことを整理しながらで、難しい状況ではあるけれども、この状況を救ってくれるのは尺野さんしかいない」という話をさせてもらいました。その時点では「すぐ返事ができない」と答えをもらった状況の中で、(2月13日、14日の)新潟戦を迎えました。ただ、尺野さんに受けていただけるかどうかはどうあれ、新潟戦後は新体制でいくと決めていました。
火曜(16日)の夜、口頭で就任受諾の返事をいただいて、すぐにチームでミーティングをして伝え、翌日の水曜(17日)に合流してもらいました。法務上、契約には時間がかかりまして、金曜(19日)の夜に契約、土曜(20日)に発表という運びになりました。現状では、3度練習して、来週の千葉戦に備えている状況です。
なぜ(尺野さんに)声をかけたかというと、本人も先ほど言いましたが、一番には「広島らしさを取り戻したい」という理由です。前回(の退任後)に、B1、B2のクラブから声がかかったにも関わらず「ドラゴンフライズの育成で広島を支えたい」と言ってくれてクラブに残ってくれました。そこからいろいろ話をしながら、トップチームのことも外から見てくれていましたし、2シーズン前に一緒に戦った時も、一番粘り強さがあったんです。前半戦は「逆転の広島」を演出してくれ、最後まであきらめない粘り強さが際立っていました。後半戦はいろいろあってかみ合わなくなってしまったけど、粘り強さを表現できたシーズンではあったかなと思っていました。
今ここで(求めるのは)、成績もそうですけど、戦い方です。なかなか粘り強さを出しにくかったので。そういうことを考えたら、尺野さんにお願いするしかないし、尺野さんなら、厳しい状況は変わらないけどなんとか光が見えてくるのではないか、広島らしさを取り戻す何かをつかめるのではないかと、大いに期待して声をかけさせてもらいました。
早速、練習を2日ほど見ましたけど、ガラッと雰囲気も変わりましたし、選手たちも心機一転という形で意欲的に取り組んでくれています。結果(を出すの)は難しいかもしれないけど、(結果に至る)プロセスについては最善を尽くして、残り23試合でなんとか広島らしさを取り戻したいと思い、決断させてもらいました。
■質疑応答①代表取締役社長兼GM 浦伸嘉
―尺野ヘッドコーチの契約期間は。
浦 基本的には、残りのシーズンだけで判断するという話ではなくて、来季も含めて「1.5年」という形での契約にしています。ただ本人はそれよりも目の前のことに集中するつもりで一生懸命やってくれています。今後は、本人の意向もあることですし、今シーズン後にまた話し合うと思います。ただ現時点では「来季も含めた今季で」と話をしています。
―「尺野さんしかない」という話が出ましたが、尺野ヘッドコーチのバスケットボールとはどのようなものなのでしょう。
浦 すごく(チームを)客観的に見てくれていたんですね。いろいろな角度で。どうしても(チームの)中にいると、自分たちの良さや悪さに気づきにくいんです。それでまた結果がでないと、本当に(やっているバスケが)正しいのかどうかも、我々自身では気づきにくくなる。(尺野さんは)外から見てもらう中で、いろいろな角度からの分析や特徴、長所と短所をポイントを突いて見抜いてくれていた。そういう部分が今最も重要な視点なので、チャレンジしながらいい形にしてくれると思います。
―具体的に、プレーの面ではどのような期待をしていますか。
浦 我々の強みはグレゴリー・エチェニケ選手のインサイド。ただ、今はそれを相手に上手く抑えられています。彼を生かしながらアウトサイドの組み合わせがはまるとスリーポイントももっと決まるし、(課題の)ターンオーバーも改善されていくのではと思います。リバウンドを獲れていないという課題もありますが、まず長所を引き延ばして短所をどう打ち消すかだと思います。
―今後の戦力補強については。
浦 新外国籍選手の契約を結んではいるのですが、前提が日本に入国できることなので(新型コロナウイルス感染の影響で)、日本に入国できない状況が続いており、発表には至れていません。3月15日のBリーグ最終登録日からもろもろの手続きを考えて逆算すると、本当にここ数日で入国制限が解除されないと難しいと思います。ただ、ここまで解除されていない状況なので、現実的には難しいと思います。国内のクラブからのレンタル移籍など、ありとあらゆる手段の情報は収集しますが、現状で決まっているものはないです。
―前回尺野さんは1シーズンで退任されました。そこから1年半。GMとして見る中で、尺野さんが前回と違うものを出せるという部分があるのですね?
浦 そうですね。現に練習を見ても、すごいスピードで指導者として成長していると思います。選手のコミュニケーションにしても、気を遣って話しているなと。戦術・戦略の部分は今も昔もプロフェッショナルなのですが、そこにプラスしてユースでの経験がさらに彼のコーチングの基盤を大きくしているなと思います。試合中継の解説もしてもらっていましたが、それを聞いても様々な角度からの視野、示唆があります。もちろん、2シーズン前に悔しい思いをしましたが、そこから本人がやってきたことを知っています。今このタイミングでこの状況を託すのは尺野さんしかいないと思ったので、楽しみですね。
■質疑応答②尺野将太新ヘッドコーチ
―まず、就任の打診を受けた時の心境を教えてください。
尺野 (聞いた)最初は、断りました。ユースのヘッドコーチに就任したときに話したんですが、地元・広島の育成環境をよくすることが自分の一番のやりがいを感じているところです。今はまさにそのど真ん中で活動している中でしたし、(並行して)個人でやっている事業もありまして、始めて半年くらいで軌道に乗ってきたところでした。生きる上で、仕事をする上で一番やりがいを感じるところに直接的に関われていた時期だったので、「やりたい、やりたくない」というところではなくて、お話をもらった時点では自分のモチベーションはそこ(トップチーム)ではないところにありました。
―それだけやりがいを感じていたところから離れ、就任を決意するまでの過程は。
尺野 まずはユースのところが一番のやりがいで、3月末に(U15の)Bリーグの大会があるので、そこに向けてと思っていました。昨年から今年はコロナ禍のため、ユースの活動はもちろん、バスケットボールそのものをすることが難しい年でした。なので残り1か月、3年生は高校に送り出し、下級生はまた来年に向けて、と。そこをやり切りたかったですね。
ただ、(HC就任の)話をもらっていろいろ考える中で、地元・広島の育成環境向上に力を注ぎたいと思う中で、それにはユースの活動の質を上げる、関わる指導者の質をよくするとか、いろんな条件があるのですが「広島県のバスケットボール」といえばピラミッドのトップにいるのはドラゴンフライズのトップチームなんです。そのドラゴンフライズが苦しい状況にある。そのピラミッドから降りていくと、ドラゴンフライズの試合を見てバスケを始める子どもだったり、勇気づけられる子どもだったり、というところまで考えた時に、将来的な育成環境のことを考えたら、トップチームの現状に少しでも自分の力を貸して、トップチームがよくなることで育成環境が良くなるのであれば、それは直接的な形ではないですけど、育成環境をよくすることにつながるのではないかなと思いました。
ただ、本当に B1で苦しい戦いが続いている中で「自分が就任したら変わる」とか、「チームが良くなる」という力が僕にあるとはまだ思っていません。ただ、浦社長からお話しをいただいて、必要とされている状況の中で、まだ僕に何ができるかよくわからないですけど、自分の持っているもので全力を尽くせば、もしかしたらチームがよくなる可能性があるのかなと考えた時に、将来的にも育成の場にいい影響が及ぶかもしれないとも思いました。
(いま指導している)目の前のユースの子どもたち、スクールの子どもたちにはすごく申し訳ないんですけど、そう考えて引き受けることにしました。
―葛藤の中での決断だったのですね。今季のドラゴンフライズをどう見ていますか。
尺野 私は本当に外から見ていただけで、メディアの皆さんと同じ立ち位置か、もしかするとメディアの皆さんのほうがより見ていらっしゃるかもしれません。昨季B2(西地区)で優勝して、今季はチャレンジするところまで来たのは堀田(剛司)前ヘッドコーチの功績で、ドラゴンフライズをB1の世界に連れてきてくれたのも堀田さんの力です。練習に行ったこともなく、選手と話したこともなく、雰囲気や様子がわからないまま、ただただ試合を見た感想からいえば、B1の1年目はどのクラブも苦しむものだと思いますし、どうしても苦しいシーズンになることは間違いないと思っていました。昇格した1年目で残留したクラブは少ないですから。秋田は残りましたが、島根や西宮は降格しています。それは、(力のある)メンバーがいる、いないは関係なく、B1という舞台の経験がないからです。
加えて、僕が横浜を指揮していた時と比べても、B1は入ってくる外国籍選手のレベルや、ポイントガードのスピード、守備のプレッシャーの強度がかなり上がっています。リーグ自体が成長している中に(ドラゴンフライズが)飛び込んでいるので「どれだけ挑戦できるかな」と最初思っていました。三遠戦でしたか、ぎりぎりまでリードしながら最後に負けたり、接戦を落とす試合を見ると「何か一つきっかけがあれば、勝ち切れば、上位は難しいながらも他クラブと戦える力はある」とみていました。ただメンバーの怪我ですとか、内部事情を知らないままただ見ていただけなので、もう少しうまくやれば…勝てるかどうかは別として、もっともっと勝負できるんじゃないか、と思いながら見ていました。
―現状は西地区最下位です。ここからどんなプランとビジョンで立て直しますか?
尺野 まずは現状をしっかり認めることですね。「本当はこうだった」とか「もっとやれる」っていうのは選手の中にあると思うんですけど、それでも勝てていない現状がありますので。周りから見ると「来季に向けて」とか「降格はないんだから」というシーズンとして見られていると思うけど、そんな戦いをしたら、そもそも来季につながらないと思います。「来季に向けて」の前に、そもそも今季を戦い切る、勝利を目指して戦い切る。勝ちを目指す、というところからまずは始めたいと思っています。それが来季につながると思うので。
3度練習に行く中で、下を向いた選手がいなかったことが救いでした。今持っているものを、僕も選手もスタッフも100%ぶつけて、それでも勝てるかどうかわからないシーズンだと思います。そもそも自分たちが(力の)100%を出せない状況なのであれば戦えないのかと思っていましたが、そういう状況ではなかったので、残り試合もまずしっかり戦い切ることができると思っています。
その中で、具体的な戦術であったり攻め方、守り方いろいろあると思うんです。多分(僕に)期待されているのは大きな変化だと思いますが、ただ大きな変化をする前に、自分たちの現状を認識しないといけないと思います。今どんな状況になっていて、自分たちの強みはどこで、今どんなプレーでやられているのか、というところをしっかり把握しながら、何を変えればいいのか、何に挑戦したらいいのかを探りながら、いろいろ試してみています。ですので、今は戦術的に劇的な変化は加えていなくて、今あるものの中で、より選手の力を生かせる方法を探っているところです。
―先ほど浦社長からあった「粘り強さ」を取り戻すためには。
尺野 粘り強さというのは、やはり守備が表現するところだと思うのですが、僕が求めている守備を24秒間だったり、40分間だったりで遂行しきれるか、徹底してできるかどうかだと思います。それが表れるのはルーズボールであったり、リバウンドです。今はジャマリ・トレイラー選手がけがをしているのでリバウンドで圧倒的に不利なのは明らかですが、そこでいかにチームとして戦えるか。高さで劣って圧倒的に不利な状況で(残り)23試合続くこともありえる。そこをチームとしてあきらめずに(リバウンドを)獲りに行けるかどうか。そこだと思います。
―尺野ヘッドコーチの思う、キーマンは。
尺野 単純に言えば、エチェニケ選手がインサイドで大黒柱としてプレーできるかどうかだと思いますし、そこの得点が伸びていくかどうかだと思います。ただB1では、一人がいいだけでは勝てないです。もし僕がドラゴンフライズの対戦相手のヘッドコーチだとすれば、まずエチェニケ選手を抑えて、次に当たりそうなシューターを抑える。ほかの選手にはいくらかやられるだろうけど、メインの選手にやられなければいい、と考えます。今ならそれに該当するのはエチェニケ選手、(トーマス・)ケネディ選手、朝山(正悟)選手だと思いますので、その次が大事だと思います。現状は日替わりでもいいと思っていますが、個人的には田中(成也)選手に期待したいです。前半はB1でのスリーポイントシュートに苦戦していて、うまくいっていないシーズンが続いていましたが、ここ数試合で復調の兆しが見えていますし、もともと守備では脚力もあり、運動量も出せる選手なので、朝山・ケネディの次、まずは次でいいと思うんですが、彼らを超える力も持っていると思うので、残り23試合でまずは田中選手らしさを取り戻してもらって、シュートの部分でチームの力になってくれたらいいなと思います。
―横浜ではシーズン途中から就任し、B1残留に導いた経験もあります。
尺野 今回は、その時の状況とは全く違います。横浜の時はアシスタントコーチからの内部昇格だったのに対して、今回はクラブの組織内にはいましたけどトップチームと全くかかわっていないので。チームとしては、外部から来たのとほぼ同じ形です。前回一緒にやっていた選手もいるし、田渡(凌)選手とは横浜で一緒にやっていましたが、全くチームを知らない外の人がチームを見るのとあまり変わらない状況ですので、(横浜の時に途中就任した時とは)様子が違うところですね。
なので、選手とコミュニケーション取るのもすごく大事になると思います。僕が前回ヘッドコーチを務めた時と違ってアシスタントコーチにも田方(慎哉)さんという優秀な人材がいたり、分析専任のアナリストもいます。なので、任せるところは任せて、僕自身は自分たちのチームが何をするか把握しながら進めていけたらいいなと思います。トレーナー、マネージャーは当時一緒にやっていたスタッフがいるので、しっかりコミュニケーションをとって選手たちのコンディションの様子を聞きながらやっていきたいと思います。
「外から入る新しい人」という立場だからこそ、なかなか難しいところはあります。ただ、今はその新しさが選手たちにとっては、リフレッシュというわけではないでしょうけど「気持ち新たにがんばろう」というところにはつながっていると思います。しかしこれは一時的な効果なので、この状態を残り23試合で続けていけるか、というところが大事かと思います。
―初陣は千葉戦です。
尺野 クラブ初のグリーンアリーナ開催であることが大きいですね。世界選手権やウィンターカップの本戦も行われた場所で、広島ではバスケといえばグリーンアリーナ。そういう場所で試合ができるのは光栄です。多くの方に見てもらえるチャンスがあると思いますので、まずはそこで、どこまでできるかわかりませんが「広島らしくやってくれたな」と思ってもらえるように戦いたいですね。もちろんそれは、それぞれに違いますし、受け取り方もそれぞれなんですけれども。
相手の千葉については、大野(篤史)ヘッドコーチやシャノン・ショーター選手は元ドラゴンフライズ。そういった部分でも楽しんでいただけると思います。結果については、現時点では(広島と)力の差のあるチームなので、なかなか「勝ちます!」とは言い切れませんが、強豪相手だからこそできる色んなチャレンジもあります。広島らしさを取り戻せるようにチャレンジしながら40分間戦える試合にしたいですね。
―具体的に何勝したい、など目標はありますか。
まず(直近の)千葉戦は、個人的には横浜時代にやられていることもあって、まず結果より内容かなと思っていますが、その後は琉球や三河など同地区の対戦がある中で、まずは残り試合で今を超える6勝を挙げたい。あとはどれだけ積み重ねられるか。ただ、星勘定をしても仕方ないので、一つひとつを全力を尽くす中で「勝った、負けた」になる中で、プラスアルファを積み重ねていきたいですね。
―前回1シーズンで交代し、悔しい思いをしたかと思います。今回、その悔しさを晴らしたい思いが原動力になっている部分はありますか。
尺野 ないです。僕の個人的な感情を晴らす場でもないと思いますし、僕がチャレンジする場でもないと思います。残りはチームがどれだけチャレンジできるかというシーズンだと思うので。僕の気持ちの部分からいえば、先ほどのユースへの気持ちがあるので「やりたくない」から始まってしまいますから。そうではなくて、「何が求められていて、何が必要なのか」を考えて、そこから「何をしないといけないのか」を考えていきたいと思います。
―前回、退任してからご自身で積み上げられたものは。
尺野 あれからトップ(カテゴリー)の指導はしていないですが、セミナーのような機会には参加してきましたし、試合は常に見てきています。ただ、先ほど言った通り、この1年半は堀田前ヘッドコーチが築いてきたものがあるので、スタイルだったりチームの文化があります。それはそれで、広島がつないできた伝統なので、ゼロにするのは難しいです。プレシーズンの準備期間があれば話は別ですが、シーズン中のことなので、いい部分は継承し、レベルを上げていく部分は一気に高められたらと思います。
―外からドラゴンフライズを見てきて、絶対にここは改善しないといけないという技術的な部分はありますか。
尺野 トランジション(切り替え)の部分ですね。攻撃から守備、守備から攻撃の切り替えです。先ほど守備の話をしましたが、そもそも速攻で走られるのは、攻撃の終わり方が悪いから。守備を強化したいけど、そのために攻撃をちゃんとしないといけない。僕としては守備の練習をしているつもりだけど、結果として攻撃の練習ばかりしています。
守備の入り口である攻撃の終わり方を整えることで、(後半戦から)取り組んでいるアグレッシブな守備もやりやすくなります。ドラゴンフライズには攻撃力のある選手が多いので、こちらの守備時にしっかり相手に責められて、(オフェンス)リバウンドを取られて(また攻められる)という部分を改善したいです。だからこちらがディフェンスリバウンドを獲る部分、守備の終わり方を意識しながら改善しようとしています。時間のかかる難しいところではありますし、すぐに目に見えた結果につながるかというと難しい。でも残りシーズンを戦うという意味では一番そこが大事かと思うので、トランジションのところを強調したいと思います。
―今の部分と重複するかもしれませんが、尺野ヘッドコーチのやりたいこと、変えたいところがあれば。
尺野 うーん…。条件が限られますからね。外国籍選手は入国できていない状況ですし。選手の選考から考えられるのであれば、僕のやりたいことを追求するのもいいと思いますが、今の状況はそうではないです。今ある力を最大限生かす、強みを生かし切ることが(ここからの)勝負では大事です。先ほどお話ししたトランジションの部分は弱いところで、試合に負けているのは弱いところが出るからです。勝つにはチームの強みを生かすところが大事、そこを確認したいですね。ドラゴンフライズの強みはエチェニケ選手のインサイド。そこは選手もみんなわかっているんですけど、「どうやって」という具体的な解決策を示してあげれば、B1に昇格したキャリアを持つ選手たちなので。それぞれの力を生かしながらチームの強みを生かし切るプレーができればいいと思います。
―前回退任時は「チームをまとめきれなかった」という言葉を残されています。その経験を踏まえて、当時と違う部分、ご自身が成長した部分はありますか。
尺野 僕がですか…。なんでしょうね(笑)。自分のことなのでよくわからないんですが、チームの状況を比べると、当時はいろいろ自分ひとりでやらないといけないと思っていました。スカウティングも一人でやっていましたし、一人で背負いこみすぎて、コミュニケーションをとる時間が無くなったりしていました。
今は、スタッフ陣が以前よりも充実していて、任せられるところは任せられますし、細かいところはスタッフに任せて、僕はもっと大きな局面をしっかり見ながら、チームに関われる体制が整っています。ヘッドコーチとしてやるべき仕事、広島が一番必要とする、チームをまとめる部分に力を注げるかなという思いがあります。そういう意味では、僕がどう変わったかは分からないですけど、環境的にはそういうものが整ってきているかなと思っています。