カイル・ミリング新ヘッドコーチ 就任会見コメント
2021年8月9日に広島ドラゴンフライズ クラブオフィスにてカイル・ミリング新ヘッドコーチの就任会見を実施いたしました。
■登壇者
岡崎 修司(ゼネラルマネージャー)
カイル・ミリング(新ヘッドコーチ)
■広島ドラゴンフライズ ゼネラルマネージャー 岡崎修司より ごあいさつ
まず、本日はお忙しい中お集まりいただき、御礼申し上げます。
新しいドラゴンフライズを指揮する指揮官を迎えて、無事に本日を迎えることができ、本当にうれしく思います。契約にいたりました経緯についても後程ご説明いたします。
■カイル・ミリング新ヘッドコーチより ごあいさつ
こんにちは!(日本語で)
ここに来れて非常にうれしいです。
やっと2週間の隔離期間が終わって、外出できたこともうれしいです。
クラブとしても大きな目標、大きなプロジェクトがあると聞いていますので、自分たちの文化をしっかり選手と一緒になって作っていって、目標を達成したいと思います。
選手たちと一緒に練習ができるのを心から待っている状況です。
■岡崎GMより就任の経緯説明
まず、昨季はヘッドコーチ(HC)がシーズン途中で交代する事態がありました。(その際に就任した)尺野(将太)HCとは複数年契約を締結している状況だったのですが、尺野HC本人の申し出によって、今季に向けては新HCを探すこととなりました。
様々な情報収集を進めていくと、カイル(・ミリング)HCがフランスのクラブとすでに契約合意しているものの、まだ我々に交渉の余地があるという情報が新たに入りました。すぐにコンタクトをとって、様々なお話しをさせてもらいました。
その話し合いの中で、我々としては「ぜひ来てほしい」という熱意や、我々のビジョン、このクラブでバスケットボールをする意味、「一緒に成長したい」という思いを伝えて、今日に至ったという形です。
以上が時系列的な流れですが、今回この決断に至った理由についてもお伝えしたいと思います。
まず、昨季の反省として、クラブとしてどういったバスケをしていくのかを明確に打ち出せていなかったのが一つあります。これは今後、文章化して明確に打ち出していく予定ではあるんですが、今時点での言葉でお伝えすると、しっかりした強固なディフェンスを構築しながら、お互いに生かしあって組織的なオフェンスを構築していく。そしてその中で「粘り強さ」というものが我々の哲学的な部分としてありますので、そこをコート上で出して、観に来ていただく人に何かを感じて帰ってもらう、そういったバスケをしたい。なのでその、自分たちのやりたいバスケットボールを体現できるコーチを探そう、と考えておりました。
(そうした中)バスケットボールの部分で、カイルHCの掲げる理念や考え方が一致したというのが(招聘に至った)大きな部分です。ただ、個人的な最大の理由は、その「遂行力」です。「自分がこういう風にバスケを展開したい」と考えて、それを現場に落とし込む力が非常に大きいコーチだと判断しましたので、そこが決断に至った大きな理由です。当然、(今季大きく)チームが変わる中、変化と成長の(過程の)中で、成長痛というか、痛みが伴うと考えています。その中でも、自分自身が仕事として、嫌われてでも…という言い方はちょっと違うかもしれませんが、やるべきこと、いいか悪いかを明確にして、選手やスタッフに浸透させる反面、一人ひとりの信頼関係の構築にも力を惜しまないコーチだと思っていますので、それが判断材料のひとつになりました。
そのバスケの部分ですが、具体的に言うと、やはりディフェンスの部分が昨季の大きな課題でした。我々は失点数よりも、どちらかというと「ディフェンス・レーティング」という数字を見ています。「相手の攻撃100回あたりの失点数」で、ディフェンスの効率を判断するうえで重要な指標かなと考えていますが、昨季の我々は101点台でリーグワースト2位でした。ここを(カイル・ミリング)HCを中心に、ディフェンスのしっかりしたチームを作り上げて、オフェンスもいい部分を持っている選手が多くそろっていますので、組織的に積み上げていくことで、勝率も上がってくるのかなと想定しています。
最後になりましたが、やはり強豪になるためには、クラブがしっかりとした理念を掲げて、HCを中心にコーチ、スタッフ、そして選手、現場に関わる全ての人間でそれを体現していく必要があると考えています。これを長期的にしっかり積み上げることで常勝クラブを作り上げようと思っていますので、今日はその一歩目となる会見にさせていただけたらと思っています。
■質疑応答①ゼネラルマネージャー 岡崎修司
―カイル・ミリングHCのどんなところが一番の魅力ですか。
岡崎 私の表現がカイルHCにとって合っているかわからないんですけど、非常に「日本人的」な部分をもっているなと感じています。遂行力を持っているんですけれども、同時に細かい部分、一人ひとりの選手に対する気遣いとかコミュニケーションですとか、そういった信頼関係を作っていくことに力を惜しまないという部分を持たれている印象を受けています。バスケットボールの部分や考え方は当然なんですけども、ここが私の中ではしっくりきた部分です。
―その魅力を感じた場面は。
岡崎 (HCを探す)交渉の段階では様々な方と話す機会がある中で、カイルHCと話すときは、話す頻度もそうですし、積極的にコミュニケーションをとってもらえるところがあり、ビジネス面ではない部分もあって、人間的に信頼できるなと感じましたし、「あったかい」と言いますか。新しい文化を作っていく上で、ぶつかる場面もあると思うんですが、その場面もバランスをとりながらやれるんではないかなと思えたのが、判断のポイントになりました。
―今回編成した戦力とHCの考え方のマッチングは。
岡崎 HCの契約に至る前に、何名か新戦力と契約していたんですけども、クラブのやりたいバスケットボールと、HCのバスケットボールは基本的には一致していると考えていますので、そのあたりは大きくずれないだろうというのが一つあります。シューティングガード(SG)のところで、辻(直人)、船生(誠也)がそうですが「ハンドラー」としてドリブルを突きながら攻撃を組み立てていける選手もそろっていますので、攻撃面でもHCのやりたいバスケットボールに近づけているんじゃないかと。もちろん100%ではないでしょうけど、近づける可能性が高いんじゃないかなと思っています。
―ミリングHCに初年度、求めたいことは。
岡崎 クラブとしては日本一を目指すのは当然なんですけども、まず今季に関してはプレーオフ、チャンピオンシップ(CS)進出ですね。そこに残って、ポストシーズンを戦いたいと思っています。
―開幕に向けて、ディフェンスをどう構築しますか?
岡崎 まず、前提として我々の考え方としてはオフェンスの構築とディフェンスの構築を比べると、ディフェンスの方が時間(のかかり方)は短いかと思っていますので、早期に確立したいと思っているところです。あとは外国籍選手の隔離期間の関係で、全員揃うのが9月頭になりますので、そこから1か月でしっかり仕上げていくのが今のスケジュール感です。
今季に関しては非公開の練習試合が多いのですが、最低でも3-4試合は組む方向で考えていて、対外試合も含めて、チームとしてディフェンスはもちろん、オフェンスに関しても同時に、という思いがあります。
そのスケジュール設計もしっかりHCとやっています。迅速に進めていきたいですね。
■質疑応答②カイル・ミリングヘッドコーチ
―今のお気持ちを。
ミリングHC クラブの理念を持っている選手を残してくれたかな、というのが一つの印象。そしてまた新しいテイストをもった選手が何人か入ってきたので、そのミックスが多く見られるんじゃないかと思って、すごく期待しています。広島というチーム、クラブ、街を代表する中心選手である朝山(正悟)のような選手と、エネルギーを持ったチャールズ・ジャクソンだったり、辻直人のようなシューターだったりと、得点能力やエネルギーを持った新たな選手との相乗効果を期待しています。ディフェンスでも足の動く選手がたくさんいます。新しい文化を作っていきたいですね。
個人的な目標は、リーグで一番のディフェンスをするチームであることです。ディフェンスは個人の力でなく、常にチームとしてのディフェンスです。そこに今季はフォーカスしたいと思います。ディフェンスは教えてできるものではないし、チームで共通認識をもって守らないと、そういう目標は達成できません。そこはしっかり時間をかけて取り組みたいと思います。
昨季、(前所属の)横浜では(コロナの影響で合流が遅れ)時間がなかったです。でも今季はもうこの段階で合流できていますし、プレシーズンマッチも含めて時間はたっぷりあるので、選手としっかりコミュニケーションをとって、いいディフェンスのチームを作れればと思います。
スリーポイントを打つのは個人の技術や才能ですが、ディフェンスリバウンドだったり、懸命に守るというのは、僕らコーチ陣が伝えることで、僕らの仕事。しっかりコミュニケーションをとって「懸命に守るんだ」という意識を植え付けたいと思います。
―ドラゴンフライズの印象と、それにプラスしていきたい部分は。
ミリングHC シュートできる選手は本当にたくさんいるし、外国籍選手の才能ある選手がそろっているので、しっかりディフェンスの意識を植え付けたいですね。才能ある新加入選手が新しい風を入れられるようにしっかりコミュニケーションをとって、ドラゴンフライズのビジョンをミックスできればいいチームができると思います。ベテランで経験のある選手がいますし、若くてフレッシュで、ファイティングスピリットのある選手もいる。ベテランが若手をリードしていけるようになれば、成長の余地はまだまだあると思いますし、成長が加速すると思っています。
―ディフェンスとリバウンド、どちらかというと地味なものにフォーカスする理由は。
ミリングHC ディフェンスリバウンド、そしてディフェンスは「すべてのチームができること」だからです。それをやるのに才能やキャラクターが必要なわけではないし、関係ありません。さほど才能ある選手がいないチームでコーチをしたこともありますが、ディフェンスの意識を持てば勝てると実感しました。60試合、すべての試合でシュートがよく入るわけではありませんが、すべての試合でディフェンスをすることはできます。そうすれば60試合、すごく安定した戦いができます。
―日本での指導は2年目です。日本のバスケットボールの印象は。
ミリングHC 大好きですね。日本選手の文化は、欧米とは違います。自らの強さを使うのではなく、こちらの言うことを聞きますし、学ぼうとしますし、どうすればいいかと質問もしてくるし、ハードワーカーです。その面が、クラブ(ドラゴンフライズ)の理念を体現するには、いい面だと思います。
―今季のプランは。
ミリングHC プランはたくさんあるのでシークレットです(笑)。
これまでも、選手と話しながらプランを変更、修正していく場面はありました。頭の中にいっぱいプランはあるんですが、選手によってプランを遂行できるかできないか、吸収が速いか遅いかもあります。だから早く練習に行ってコミュニケーションをとりたいですね。それによって、どういうプランが彼らに合うのかを考えながら、一歩一歩進めていければと思います。
―抱負も含めて、広島の皆さんへのメッセージを。
ミリングHC 個人的には「悔いのないように、勝てる試合をできるだけ多く勝つ」ことです。今、順位のことを言うのは難しいですし、怪我もあるでしょうし、問題も起こるでしょうけど、悔いのないように懸命に戦いたいです。チームとスタッフの皆さんには楽しんでシーズンを送ってほしいし、ファン・ブースターや街のみなさんには喜びとなるようなシーズンを送り、いい1年にしたいと思います。
昨年、広島に来ることはできなかったですが、広島のファン・ブースターは熱いと聞いていますし、早く10月2日の開幕戦で、みなさんの前で戦いたいです。
―すでに決まっていたフランスのクラブとの契約を解除し、広島に来た理由は。
ミリングHC 20年前に選手として1年、そして去年と日本で、とても楽しく過ごすことができ、日本に帰ってきたいと思っていました。フランスのクラブとの契約、そして契約解除にいたっては個人的な理由も様々ありますが、ともあれドラゴンフライズから声がかかったので、日本に再び帰ってくることができました。
―岡崎GMは、CS進出という具体的な目標を掲げられましたが。
ミリングHC もちろん、すべてのチームがプレーオフ、CSに出たいと思うだろうし、ヘッドコーチも選手もスタッフもすべてそうだと思いますし、もちろん私も勝ちたいです。先ほど言った「勝てる試合を一つひとつ勝っていく」ことがそれにマッチしていると思います。1試合1試合をしっかり戦って、CSに出ることができればいいですし、目の前の一つひとつを勝っていくことが、大きな成果になればと思います。
―「ディフェンスで足の動く選手がいる」というお話しがありました。期待している選手は。
ミリングHC 先ほども言いましたが、ディフェンスは一人でできるわけではありません。例えば、チャールズ・ジャクソンのようなエネルギーを持った選手が大きな核になるかもしれませんが、そうではなくて一人ひとりがコート上で責任感と自覚をもって守って、チームのプランを遂行していかなければいけません。
それは攻撃も同じで、1人、2人が20得点すればいいというものではなく、ベンチメンバーも含めて5-6人が10点をとるようなチームが強いことは分かっています。例えば(宇都宮)ブレックスのような、みんな得点がとれて、みんな守れる。そんなチームになりたいですね。
―デイフェンスの構築にあたり、短期的・中長期的それぞれの計画は。
ミリングHC まず、開幕までの4-5週間で基盤を構築していきたいと思います。私の新しいベース戦術を知ってもらい、まずは基盤を構築する。その過程で、私も選手たちを知り、選手たちも私を知ります。まずは私のスタイルを知ってもらうことですね。
そこからは技術面の小さなステップをひとつひとつ踏んでいき、プレーのパターンを追加していくイメージです。そして今季、メインの目標は文化を作っていくことです。
―契約合意時「ディフェンスをメインにして忍耐強さを持ち込みたい」とコメントされた真意は。
ミリングHC 繰り返しになりますが、ディフェンスは教えてできることではないです。メンタリティ(気持ち)とエネルギーが大事で、才能は関係ありません。僕らが教えるのはメンタリティの部分です。それがあればハードなディフェンスはできます。
そして、強いチームは必ず安定したディフェンスができます。
―Bリーグは経営力を重視する規定に刷新しようとしていますが、このことは新ヘッドコーチとしての方針やスタイルに影響を与えるでしょうか?
ミリングHC そのことそのものが私のコーチングスタイルに影響することはないと思います。例えば選手が移籍したり、といったことはあると思いますが、それには私の方から対応していくと思います。
今回も、横浜でやっていたことを完全に再現するわけではないですし、私のベースは変わらず、(状況に)対応していきます。